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産業

手もみ茶の製法

手もみ茶の製法は蒸し製である。ウーロン茶や紅茶の発酵製法とは異なる。その製法は「蒸し→揉捻→乾燥→荒茶」という流れが工程の基本である。

蒸す

蒸す→ 葉干し→ 助炭→ 揉捻→ 荒茶→ 仕上げ

手揉み茶(蒸す)最初に生葉を蒸す工程を「茶蒸し」という。これは女たちの役目で、前の晩、大釜に水を八分目ぐらい入れておき、翌朝四時ごろ起きて湯をわかす。燃やすものは、匂いのないそば殻がよいとされていたが、火持ちがよくないので、火付きのよい松薪を使用することが多かった。 湯が沸騰したら、蒸気が抜けないよう藁で作った釜台をのせ、その上に蒸籠を置いて、生葉を三つかみか四つかみを入れてふたをする。およそ十五・六秒してから、二つまたの菜箸(まなばしともいう)でかきまぜ、菜箸に茶がからみつくようになるまでつづける。 かまどの煙が蒸籠の中に入ると茶の風味が損なわれるので、煙の流れには十分注意を払った。茶は飲み物のなかでもとくに風味や匂いを重視するものなので、茶に匂いが移るのを極度に警戒し、酒臭い人やクリームの匂いまで嫌われた。 生葉に蒸気を通すことは、茶の葉のあく抜きにもなり味に大きな影響を与えるので、製茶工程のなかでは、最も重要な基本的作業である。この作業の良否が製品の良し悪しにつながるので細心の注意を払って行った。

葉干し

手揉み茶(葉干し)蒸された生茶は緑色のまま軟らかくなる。蒸籠から取り出した茶の葉には水分がついているので、竹を編んだ「茶びら」と呼ばれるものの上に広げて素早く水分を取り除く。 茶びらの上で乾かされた茶の葉は、いよいよ助炭の上で「葉干し」の工程に入る。手もみ茶づくりは、助炭の上での格闘といってもよいくらい熱さとたたかいながらの作業が主体となる。「茶づくりは肉を売るようだ」ともいわれるくらい激しい労働の連続だった。

助炭

助炭は、焙炉を熱源とする。焙炉とは木材と土を材料としてつくった製茶用の炉で、炭火を使う。その上に、底の部分に和紙を張り合わせた木のワクを乗せる。それが助炭である。焙炉には一度に二貫目の堅炭使う。炭は火加減が難しい。一日中一定に火力を保つように炭の上に藁を厚くなく薄くなく一面に掛け、霧を吹く。これを「衣掛け」という。全体に同じ厚みに藁を敷くために、使用済みの俵を半分に切って炭の上にのせる場合もある。 藁に点火するときは両方の端(コグチ)から火をつける。霧を吹くのは、藁が燃え抜ける事なく、白くならないようにするためで、灰が白くなると火力が強すぎて、よい茶ができない。これを「衣が抜ける」という。助炭の上での最初の工程は葉干しで、生葉の水分を取り除くための作業である。助炭の上に一貫目ほどの生葉を乗せ、両手で何回も高くもちあげてささがす。生茶の露が切れたころあいをみて、右へ左へといっぱいによりころがして乾燥させる。ある程度乾燥した茶の葉は、茶ビラに取って広げる。六貫目の生茶が一回分で、この作業を六回くり返す。

揉捻

揉捻とは文字どおり生茶を手でもむことであるが、これをふつうには「生殺し」といった。 蒸されて軟らかくなった茶の葉を揉むことによって茶の葉の組織をこわし、お湯を注いだとき細胞内の各種成分がお湯に浸出しやすくするのである。したがってこの工程が不十分な場合にはお茶の味を十分に味わうことができないので、丹念に揉まなければならない。手もみ製法ではこの工程がいちばん骨の折れる重労働で、渾身の力をこめて行なう。ちょっとでも手を休めると助炭の上の茶はこげてしまい、汗をぬぐう暇もないくらい忙しい作業である。 この工程も六分の一ずつに分けて行い、終わったものから茶びらに移す。

荒茶

揉捻の工程を経た茶はいよいよ仕上げの工程に移る。仕上げに入る前に、助炭の紙の破れた所をつくろっておく。これには「西の内」と呼ばれた上等な和紙を用いる。これを助炭紙といい、旧家などに伝わる古文書がよく使われた。このために猿島地方には現在、よその地域に比べ古文書が少ないといわれている。 手揉み茶(荒茶)仕上げは、助炭の上で茶の向きを揃えながら乾燥させ、続いて上下にこすり合わせる。 この製法には様々な流儀があって、それぞれ秘法が継承されていた。流派には「でんぐり流」「こく流」「板より流」などがあったが、「でんぐり流」が主流だった。 この仕上げで茶は完全に乾燥し、形状は木綿針のようになる。これを作業場の明かり取りの障子に投げると突きささるほどであった。 助炭の上での作業は若い衆でなければ耐えられないような激しい肉体労働であったが、また一面、茶づくりの名人たちにとってはいちばんの見せ場でもあった。手もみ茶はその名のとおり全くの手作りなので、「茶天狗」とか「茶法螺」といわれた名人級の手にかかると、茶は助炭の上で、思うように操られ、見る人たちの目をそばだて感嘆の声が漏れるほどだった。それを意識してか、「茶天狗」たちは身なりにも注意し、人の目の集まる指先をだいじにしたので真白な手をしていた。 このように男たちにとって茶揉みは重労働であったが、苦しいばかりでなく、茶の季節には地域全体がなんとなく活気づき、人間の息吹きのするふれあいの場でもあった。「お茶は終わるし、お茶師は帰る。助炭ながめて目に涙」この唄は茶時の終わったあとの人々の気持ちをよく表している。 仕上げの工程が終わったものを荒茶という。荒茶とは製品になる前の原料茶のことで、手もみ茶は生葉六貫目が荒茶一貫六百匁となり、仕上げると一貫二百匁となるのが標準だった。

仕上げ

手揉み茶(仕上げ)「仕上げ」とは完成品にすることで、荒茶を茶箕で吹葉と粉茶により分ける。これを「吹き分ける」とか「吹き出し」といった。茶箕で吹き出せない古葉や玉茶、茶の茎は、茶ぶ台の上に広げて端から丹念に拾い分けた。これを「ごみ拾い」といい、主として根気のよい年配の女の人の仕事とされていた。 ごみを拾い出したあと、茶の形状を整えるために、網目の大きさの違う三種類ぐらいの篩にかける。これを「手振り」、訛って「てっぷり」といった。このようにいくつかの仕上げの工程を経て精選された茶は、弱火で熱せられた助炭の上で再び加熱される。これを「火入れ」という。この火入れの作業は最後の工程であり、これによって製品の良し悪しが決まるとさえいえる。長年の努力と経験によって技を磨いた人の手になると、中級の茶でも、火入れの次第で優れた茶に仕上げることができたといわれる。助炭の上で茶を左右に動かし、まるで茶が逃げまわっているような状態になり、茶独得の香ばしい香りが出てきたら終わりになる。こうして、生葉から火入れまでの全工程を終えた茶は、美しい、煎茶と呼ばれるお茶となる。

「猿島町史」民俗編 第2章 第1節 田と畑 四 茶業

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